Hayabusa2と
プラネタリーディフェンス

小惑星Ryuguへのタッチダウンとサンプルリターンというミッションを成し遂げたHayabusa2はその後後期ミッションとして、小惑星のフライバイ観測にも取り組んでいる。

Hayabusa2とプラネタリーディフェンス

はやぶさ2 拡張ミッション

小惑星探査機「はやぶさ2」は2014年に打ち上げられ、地球接近小惑星リュウグウから試料を持ち帰ったJAXAのミッションです。この成果は、小惑星がどのような物質でできているのか、太陽系がどのように形成されたのかを知るうえで重要な手がかりをもたらしました。同時に「はやぶさ2」は「プラネタリーディフェンス」にも大きく関わっています。地球に接近する小惑星(NEO)の性質を正確に知ることは、将来もし地球衝突の危険がある天体が見つかった場合に、そのリスクを正しく評価し、対策を検討するための基礎となるからです。「はやぶさ2」はこうした観点からも世界的に注目される探査機となっています。

トリフネのフライバイ観測

「はやぶさ2」はリュウグウでの主要任務を終えた後も、航行を続ける「延長ミッション(拡張ミッション)」に入りました。その重要なイベントの一つが小惑星トリフネへのフライバイです。トリフネは地球の近くを通る軌道をもつ小型の小惑星で、直径が数百メートル程度と推定されています。このようなサイズの小惑星は数が多い一方で観測が難しく、詳しい形状、表面の性質などは十分に分かっていません。「はやぶさ2」は精密な軌道制御によりトリフネ近傍を高速で通過しながらカメラなどで観測を行い、地上望遠鏡だけでは得られない近接距離での観測データを取得します。「はやぶさ2」によるトリフネの観測は既に軌道上にある探査機を小惑星に導く軌道制御技術やフライバイ観測の貴重な実証機会であるほか、小惑星がどのような形や構造をしているのか、どのような物質でできているのかを理解する貴重な機会ともなります。

小惑星リュウグウ
「はやぶさ2」がこれまでにランデブーした小惑星リュウグウの観測結果。これから向かう小惑星トリフネがどのような形・性質をしているのか、今後のフライバイ観測によって明らかになっていく。Credit: JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研

トリフネ・フライバイの意義

プラネタリーディフェンスでは「もし地球に向かってくる小惑星が見つかったら、どう対応すべきか」を事前に考えておくことが重要です。そのためには対象となる小惑星の大きさ、質量、自転、表面や内部の構造といった情報が欠かせません。トリフネへのフライバイ探査は小惑星についてこのような情報を得ることが重要な目的になっています。さらに、フライバイにおける探査機の運用もプラネタリーディフェンスにとって重要なものになっています。「はやぶさ2」は小惑星に到着して探査をするための探査機ですから、小惑星に接近しないと詳細なデータを得ることができません。フライバイにおいてもなるべくトリフネに接近するような運用を行いますが、そのためには非常に正確なナビゲーションの技術が必要になります。もし、正確なナビゲーションができれば探査機を小さな小惑星に衝突させることもできるわけで、これは米国がDART探査機によって行った実験のように小惑星の軌道を変更する技術に繋がるのです。このように、「はやぶさ2」のトリフネフライバイは小惑星の観測と探査機の運用においてプラネタリーディフェンスに貢献するものになっています。